たまたま先日マガル族旦那とライ族妻の夫婦という、ある種現代を象徴するようなネパール人夫婦知り合った。「現代を象徴するような」というのは、元来ネパール人は同族内で婚姻するのが一般的だったがここ数年〜十数年でその慣習が急速に失われつつある。特に同じく日本在住のインド人を見ているといまだに婚姻はインドに戻り、故国の親許が決めた相手(主に滞日の独身インド人は男性である場合が大半なので主に許嫁)としがちであるのに対し、社会的・経済的な要因もあるのだろうがネパール人はインド人とは対照的に自由恋愛で民族や時には国籍の壁も超越して婚姻する度合いが高いと感じる。

そんな事に思いを馳せつつも頭の中は数年前訪問した東ネパールのダラン。ヒレなどで食べた食事がよみがえる。「ライ族だったら豚(スングル)料理だね〜、希少な素材の味を味わうのはやはりセクワに塩だよね」などとスングルスングル知ったかぶって喋ったのが功を奏したのかお宅に招いてくれる運びとなり、本日彼らの自宅のディナー招かれた。途中から彼らの友人であるグルン族のサンタ君も加わった。

狭いアパートの一室に通されまずは手土産の缶ビールで乾杯。まずはネパールの酒談義。
コド・コ・ロキシー(シコクビエのロキシー)、ファーパル・コ・ロキシー(そば粉のロキシー)などの他にシャウ・コ・ロキシー(マルファともいう/リンゴのロキシー)も美味しいという。タカリ族だけの飲み物かと思ったがグルンの彼らも飲むらしい。カトマンズ市内にも入手できる酒屋があるという。


まずアテ的な感じでスングル(豚肉)炒め、ゴーヤなどのアチャール、生キュウリが登場。 アチャールもその場で作ったのに非常にコクがあって美味しく、酒が進んで仕方ない。

ちなみにネパール料理を特徴づける食材の一つとしてサグ(青菜)が有名だが、彼らに言わせるとラヨ・コ・サーグ(からし菜)が最も脂身たっぷりの豚肉に合って美味いという。ラヨのシーズンとしてはダサイン・ティハールの頃、つまり秋口が最盛期らしい。またこれに合わせるバート(ライス)で一番美味いのはマンスリ・チャマルという銘柄だという。ちなみに南インドでよく食べられるソナマスリとネパール語のマンスリが同じなのかどうかは不明。(インドのソナマスリは『黄金の蔦』の意味)ちなみにサーグ(青菜)にはトリ・コ・サーグやヒリ・コ・サーグなど様々な青菜が無数に存在するという。一つ一つ全部味比べしたくなった。
今日の豚肉は、日本のスーパーで販売しているものでは故国ネパール・ライ族の味には程遠いらしく、新大久保の中国人の食材店で購入したという脂身と皮の付いた豚肉が実に美味い。噛むほどに味わい深く脂身は甘く、諸事情が許せば半永久的に咀嚼し続けたい程。これ程の肉料理がこのような豊島区内の家賃4万円の失礼ながらボロアパートで供されようとは驚嘆に値する。やはり南アジア料理に於いてレストラン料理>家庭料理というヒエラルキーは変わらない。ネパール料理は家庭の味が最上位なのでこうした機会に恵まれた場合、可能な限り無理をしてでも食べさせていただく事にしている。

彼らの(友人のサンタ君も含めて)日本でのキャリアは九州福岡市での学生としてがスタートだったという。初の日本滞在は福岡市で、皆さん福岡に数年間滞在後に東京に来ている。福岡市の方々には大変お世話になったとしみじみ述べており、こうした好印象がその後に続く訳で就学や住環境に於ける福岡市のアドバンテージは他の都市の追随を許さないまでになっていると改めて感じた。


スングルのアテを都合3〜4度お代わりしたあと、ようやくメインのダルバート。たっぷりのシダラ入りダルにはギウがたっぷりサルビスされ、そのカロリーの高さに若干躊躇しつつも身体は本能の赴くままに食べ、咀嚼を続ける。あまりのタルカリの美味さにバート(ライス)がcan't stop 状態となり、再度奥さんに圧力鍋でバートを炊いてもらった。改めて家庭のネパール料理の美味さに圧倒された一夜だった。
#ネパール人家庭でいただく食事シリーズ

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